春秋時代98 東周定王(三) 前604~602年

今回は東周定王三年から五年までです。
 
定王三年
604年 丁己
 
[] 春、魯宣公が斉に行きました。
斉の高固が叔姫(魯女)を自分の妻にするため、斉恵公に進言して魯宣公を国内に留めさせました。
魯宣公は高固との婚姻を許可します。
 
夏、魯宣公が斉から還りました。
国君が脅迫に屈して隣国の臣の婚姻に同意するのは誤りと非難されました。
 
秋九月、斉の高固が叔姫を迎えに魯に来ました。卿大夫が他国から妻を娶る時は国境を越えて迎えに行くことが礼とされていました。
 
[] 魯の叔孫得臣が死にました。
 
[] 冬、斉の高固と子叔姫が魯に来ました。子叔姫の「子」は既婚を表します。
二人が魯に来たのは「反馬」のためです。「反馬」というのは婚礼の儀式の一つです。当時の結婚では、士人の新婦は夫の家の馬と車を使って嫁ぎに行きましたが、卿大夫の新婦は実家の馬と車を使いました。結婚後、車は夫の家に留められました。妻としてふさわしくないと判断したら、その車を使って実家に帰らせるためです。しかし馬は三カ月後に妻の家に返されました。夫が「妻と別れることはない」「実家に帰らせることはない」という意志を妻の家に示すためです。
 
[] 楚が鄭を攻撃しました。
史記・鄭世家』に楚が鄭を攻撃した理由が書かれています。
の礼物を受け入れて華元を釈放したことに不満でした。そこでを攻撃しました。
から離れ、晋に帰順しました。

同じ頃、陳が楚と講和しました。

晋の荀林父が兵を率いて鄭を救け、陳を攻撃しました。
 
資治通鑑外紀』はここで『新序』『説苑』等に書かれた楚荘王に関する故事を複数紹介しています。長くなるので別の場所で書きます。

春秋時代 楚荘王と孫叔敖(一)

春秋時代 楚荘王と孫叔敖(二)


[] 前年にも書きましたが、『史記』の『秦本紀』『十二諸侯年表』はこの年に秦の共公が在位五年で死に、子の桓公が継いだとしています(『春秋』の記述と異なります。前年参照)
 
 
 
定王四年
603年 戊午
 
[] 春、晋の趙盾と衛の孫免(恐らく大夫)が陳を攻撃しました。前年、陳が楚と講和したためです。
 
[] 夏、周定王が大夫・子服を斉に送って婚姻を求めました。
 
[] 秋、赤狄が晋を攻めて懐と邢丘を包囲しました。
晋成公が反撃しようとすると、荀林父(中行桓子)が言いました「彼等に民を害させ、その悪を充満させれば、簡単に滅ぼすことができます。『周書(康誥)』にある『大国の殷を絶滅させる(殪戎殷)』とはこのような状況をいっているのです。」
 
[] 八月、魯で螽害がありました。
 
[] 冬、周の卿士・召桓公が斉に入って姜氏(王后)を迎えました。
 
[] 楚が鄭を攻め、講和して兵を還しました。
 
[] ある日、鄭の公子・曼満と王子伯廖(王子は恐らく氏。どちらも鄭の大夫)が話しをしました。話の内容から、伯廖は曼満が卿の地位を望んでいることを知ります。
後に伯廖が知人に言いました「徳がないうえに貪欲なのは、『周易』の『豊之離』の卦だ。三年を越えることはない(易の内容はよくわかりません)。」
果たして一年後に曼満は鄭人に殺されました
 
 
 
定王五年
602年 己未
 
[] 春、衛成公が孫良夫(孫桓子)を魯に送って盟を結び、併せて晋との会盟について相談しました。
 
[] 夏、魯宣公が斉恵公と共に萊国を攻撃しました。
資治通鑑外紀』は莱を子爵の国(莱子爵)としています。
 
秋、魯宣公が萊討伐から還りました。
 
[] 赤狄が晋を侵し、向陰(周の向邑)の禾を奪いました。
 
[] 魯を大旱が襲いました。
 
[] 鄭の公子・宋の進言によって、鄭が晋と講和することになりました。公子・宋も鄭伯の相(補佐役)として会盟に参加します。
冬、晋侯(成公)・魯公(宣公)・宋公(文公)・衛侯(成公)・鄭伯(襄公)・曹伯(文公)が黒壤(黄父。晋地)で会しました。周の卿士・王叔桓公も会に参加し、晋を中心とする同盟国に服さない国(楚を中心とする勢力)に対しての方針が相談されます。
 
晋で成公が即位してから、魯宣公は晋を朝見したことなく、大夫に聘問させたこともありませんでした。そのため晋成公が魯宣公を捕えてしまいました。諸侯が黄父で盟を結びましたが、魯宣公は結盟に参加できませんでした。
暫くして魯が晋に賄賂を贈ったため、宣公は釈放されました。
 
[] この年、『資治通鑑外紀』と『資治通鑑前編』には「河が徙った(移った)」と書かれています。これは『水経注・河水五』の記述が元になっており、黄河が河流を変えたことを意味しています。
黄河は長い歴史の間に何回も流れを変えてきましたが、この東周定王五年の記録が文献に残された最も古いものとされています。
 
[] 燕桓公が在位十六年で死に、宣公が立ちました。
 
 
 
次回に続きます。