東漢時代337 献帝(十九) 徐州討伐 193年(2)
下邳の人・闕宣(『資治通鑑』では「下邳・闕宣」、『後漢書・孝献帝紀』では「下邳賊・闕宣」です。『資治通鑑』胡三省注によると、闕氏は「闕党の童子」の後を継いだ者です。「闕党」は地名、「童子」は二十歳以下の男子で、『論語・憲問』に「闕党童子」の故事があります。また、縦横家に闕子の著書があります)が衆数千人を集めて天子を自称しましたが、陶謙がこれを撃って殺しました。
『三国志・魏書一・武帝紀』には「下邳の人・闕宣が衆数千人を集めて天子を自称した。徐州牧・陶謙が共に挙兵し、泰山の華・費を取って任城を攻略した。秋、太祖(曹操)が陶謙を征して十余城を下した。陶謙は城を守って敢えて出撃しなかった」とあり、『後漢書・劉虞公孫瓚陶謙列伝(巻七十三)』にも「闕宣が天子を自称した。陶謙は始めは合従していたが、後にこれを殺してその衆を併せた(『三国志・魏書八・二公孫陶四張伝』もほぼ同じです)」とあります。
しかし胡三省は「陶謙は徐州を拠点にしており、義を理由に勤王していたので(託義勤王)、闕宣の数千の衆のために合従する必要はない(何藉宣数千之衆而與之合従)。陶謙の別将と闕宣が共に曹嵩(曹操の父)を襲ったので(下述します)、曹操がこれを陶謙の罪にして討伐したのであろう」と解説しています。
大雨が降りました(雨水)。
(朝廷は)侍御史・裴茂を派遣して詔獄を調べさせ、軽繋(刑犯罪者)を赦しました。
袁紹が出撃して朝歌鹿腸山に入り、于毒を討ちました。五日間包囲攻撃して破り、于毒とその衆一万余級を斬ります。
そこで呂布は雒陽に還ることを求めました。
六月辛丑、天狗(星の名)が西北に移動しました。
元太尉・曹嵩が難を避けて琅邪にいました。
曹嵩の輜重は百余両(輌)もありました。
曹嵩と少子・曹徳が華・費の間で襲われて殺されてしまいます。
曹嵩の家族は応劭が迎えに来たと思っていたため備えを設けていません。
懼れた曹嵩は後垣(裏の壁)を穿って先に妾を外に出そうとしました。しかし妾が太っていたため、すぐには脱出できません。曹嵩は厠に逃げましたが、妾と共に害され、闔門(家族。一家)も皆、殺されました。
応劭は懼れて官を棄て、袁紹を訪ねました。
裴松之はもう一つの説を載せています。
『資治通鑑』に戻ります。
陶謙は兵が敗れて郯に走り、守りを固めました。
『資治通鑑』胡三省注によると、郯県は東海郡に属し、徐州刺史の治所です。
しかし今回、曹操の進攻に遭い、男女数十万口が泗水で皆殺しにされ、水が流れなくなるほどでした。
『資治通鑑』は「坑殺男女数十万口於泗水」と書いていますが、『後漢書・劉虞公孫瓚陶謙列伝(巻七十三)』では「凡殺男女数十万人」、『三国志・魏書八・二公孫陶四張伝』では「謙兵敗走,死者万数,泗水為之不流(陶謙の兵が敗走し、死者は万を数え、そのために泗水が流れなくなった)」です。『資治通鑑』の「坑殺」は「屠(虐殺。皆殺し)」の意味だと思います。
『資治通鑑』に戻ります。
曹操は郯を攻めましたが、攻略できなかったため去りました。
しかし慮、睢陵、夏丘を攻め取って虐殺します(皆屠之)。鶏や犬も全て殺され、廃墟となった邑には歩く人がいなくなりました。
『資治通鑑』胡三省注によると、慮、睢陵、夏丘の三県とも下邳国に属します。このうち、夏丘は堯が禹を夏伯にした時の邑で、漢が夏丘県にしました。
九月甲午、朝廷が儒生四十余人を試験し、上第(成績が優秀な者)に郎中の位を、次の者に太子舍人の位を下賜しました。下第者(成績が劣る者)は退けます(罷之)。
献帝が詔を発しました「孔子は『学んでも講じない(研究しない。道理を明らかにしない。原文「学之不講」)』と言って嘆いた。『不講(深く研究しないこと。または復習しないこと)』であったら知識は日々忘れてしまうものだ。今、耆儒(老齢の儒者)は年が六十を越え、本土(故郷)から去って離れているが、糧資(生活の糧)を求めて専業できずにいる(学問に専念できないでいる。原文「営求糧資不得専業」)。結童(髪を結ったばかりの児童)にして入学し、白首(白髪)になって空しく帰っても、長く農野を棄てており(長委農野)、永遠に栄望(仕官して栄誉を得る希望)が絶たれている(永絶栄望)。朕はこれを甚だ憐憫する(朕甚愍焉)。よって、試験の結果、退けられた者も太子舎人になることを許可する(其依科罷者聴為太子舍人)。」
『孝献帝紀』の注のよると、当時、長安中でこういう謠(歌)が流行りました「頭髪は純白になり、食事も充たされていない。衣服を包んで裳をまくり(原文「裹衣褰裳」。誤訳かもしれません)、故郷に帰ることになった。しかし聖主が憐憫し、全て用いて郎にした。布衣(平民の服)を棄てて玄黄(彩色の絹織物。貴人の服)を着ることになった(頭白皓然食不充糧。裹衣褰裳当還故郷。聖主愍念悉用補郎。舍是布衣被服玄黄)。」
博士以下の者にそれぞれ差をつけて賞賜を与えました。
孛星(異星。彗星の一種)が天市に現れました。
次回に続きます。