東周列国志

『東周列国志』は、西周末から春秋戦国時代を経て、秦が天下を統一するまでの、五百五十年以上に渡る長い時代を舞台にした長編歴史小説です。
明朝中期の余劭魚が『列国志伝』を書き、明朝末期馮夢龍が『列国志伝』を基礎にして『新列国志』を編纂し、清代の蔡元放が更に改編して『東周列国志』を完成させました。
 
日本では中国の古典歴史小説といえば『三国志(『三国志演義』。中国では通常、『三国演義』といいます)』ですが、中国では『三国演義』と並んで『東周列国志』もよく読まれています。
 
全百八話からなり、第一話から第三話の途中まで西周時代、その後、第八十話あたりまで春秋時代、残りの三十話弱が戦国時代です。
『春秋左氏伝』『国語』『戦国策』『史記』等を元とし、史書では簡潔に書かれている故事に肉付けをして、分かりやすく躍動的な物語にしています。
あくまでも小説なので鬼神妖異の類が登場したり、史実とは異なる個所もありますが、春秋戦国時代の流れを理解する助けになると思うので、訳していこうと思います。
 
但し、本文に忠実な完訳ではなく、なるべく分かりやすい意訳・簡訳に努めるつもりです。
例えば本文中にはしばしば詩が出てきますが、省略しても話の流れに影響が出ない場合は全て省略します。
一例を挙げます。
第二回で西周宣王を称える詩として
於赫宣王,令徳茂世。威震窮荒,変消鼎雉。
外仲内姜,克襄隆治。幹父之蠱,中興立幟
が紹介されていますが、私の訳では詩の面白さを伝えることができず、また、省略しても文脈に影響はないので、割愛しました。
 
また、漢文としての表現をいちいち訳していくと、非常にくどくなることがあるので、場合によっては簡単な表現に置き換えます。
これも一例を挙げます。
宣王が狩猟に行く時、「旌旂対対,甲仗森森」という描写があります(第一回)
「旌」は羽毛で装飾された旗、「旂」は旗竿の上に鈴があり、龍が描かれた旗です。「対対」というのは恐らく二種類の旗が対になって連なっている様子だと思います。
「甲仗」は甲冑を着て武器を持った衛士で、「森森」は無数の衛士が集まっている様子です。
しかし一文字一文字を細かく訳していたら文字の解説だけで終わってしまうので、「多数の旗をなびかせ、甲冑で身を包んだ無数の衛士を率いて」と訳しました。
 
このように、私の訳はあくまでも意訳・簡訳なので、原文の雰囲気が伝わらない場面もあるかもしれません。ここで『東周列国志』に触れてみて、もしも興味を持つようになったら、やはり原著に触れてみることをお勧めします。
尚、私が参考にしているのは華夏出版社(中国)の『東周列国志』です。
 
 
簡訳『東周列国志』は本編との同時進行になるので、更新が遅くなることが予想されますが、最後まで続けたいと思います。
次回は第一回です。
 
 
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